石英ボート

石英ボートとは、主に半導体製造プロセスで使用される石英ガラスで製造されたボート型のウエハー保持具(ホルダー)です。プロセス中に半導体ウエハーを保持および輸送するために使用されます。

石英ガラスは、一般的なガラスに比べて高温への優れた耐熱性を持ちます。これは、軟化点が約1,700℃と非常に高く、熱膨張係数も小さいためです。広い温度帯で強度を保つことができ、変形を起こしにくい材質です。また、化学的にも各種薬品に対して安定性が高く、耐摩耗性、透明性にも優れています。そのため、石英ボートは試料や製品材料を入れて、高温の炉で処理する用途で用いられることが多いです。

特に、半導体製造用の石英ボートはウエハーを保持する溝が設けられており、縦型、横型などの形状の種類があります。一般的に小径のウエハーに用いられる石英ボートは横型が多く、口径の大きいウエハーでは縦型が多く使われています。

半導体製造に用いられる加熱装置「炉(ファーネス)」には、縦型と横型の2種類があります。かつては横型炉が一般的でしたが、現在では縦型炉が主流となっています。その背景には、製造現場における効率性と品質向上への要求が関係しています。

縦型炉の第一の利点は、ウエハーへの熱処理が均一に行えることです。炉内に垂直に配置された石英管の中で、ウエハーを上下に搬送することで、温度分布や膜厚のバラつきが抑えられます。第二に、ウエハーの反りや結晶欠陥といった品質リスクが低減される点も重要です。   さらに、ウエハーの出し入れ(移載)が容易で、工程の自動化や省人化にも適しています。

また、縦型炉は装置の設置面積(フットプリント)が小さく、限られたクリーンルーム内での空間活用にも優れています。これらの理由から、縦型炉は高集積・高品質が求められる現代の半導体製造において広く採用されています。

【石英ボートの形状や種類】

  • 溝数・スロット数(ウエハー枚数)
  • ウエハーサイズ(2〜12インチ)
  • ボートの形状(縦型・横型・円筒型・箱型、板溝型など)
  • マザーボート・ロッド型・サポートバー型・取っ手付きタイプ・車輪付きタイプなど

石英ボートの形状や種類は、装置や工程に最適化された設計によりカスタマイズされます。

石英ボートの使用用途

石英ボートが使用される主な分野は、半導体・液晶製造装置関連をはじめ、太陽電池の製造工程、LED・光電子デバイス製造プロセス、理化学実験や試験分析分野など多岐にわたります。加えて、研究機関や大学における加熱・反応実験など、高温や高純度が求められる場面でも広く活用されています。

1.半導体製造

半導体製造分野では、石英ボートは熱処理工程(拡散・酸化・アニール)をはじめ、CVDや蒸着などの成膜工程、薬液や反応ガスを用いるエッチング工程で広く使用されています。
熱処理工程(拡散・酸化・アニール)とは、半導体製造においてシリコンウエハーの電気的特性を調整するために行う高温処理の総称です。拡散は不純物をウエハー内部に導入し、酸化は表面に酸化膜を形成し絶縁性を高めます。アニールは加熱により結晶欠陥を修復し、特性を安定させる工程です。
CVD(化学気相成長)・酸化工程は、半導体製造において薄膜を形成するための重要なプロセスです。CVDは気体状の原料を反応させ、ウエハー表面に均一な膜を生成します。酸化工程では、シリコンウエハーを酸素や水蒸気と高温下で反応させ、表面に絶縁膜(酸化シリコン)を形成します。
蒸着プロセスとは、ウエハーの表面にCVDなどの方法で酸化膜などの薄膜を形成し、電気的な特性を持たせるプロセスです。一般的には1,000℃付近の高温の電気炉で処理を行いますが、蒸着を行うウエハーの保持容器として耐熱性の高い石英ボートが利用されます。また、エッチングプロセスでは薬液や反応ガスなど腐食性反応剤が利用されますが、このような薬品へ耐薬性のある容器として石英ボートが適しています。

2.理化学機器

石英ボートは、理化学実験の分野で加熱や燃焼実験、焼結などに利用されています。
優れた耐熱性と耐薬品性を生かして、種々の化学反応や化学処理に対して容器として利用することが可能です。多くの薬品や溶剤に対して耐性がありますが、アルカリ溶液やフッ酸、300℃以上のリン酸には侵される可能性があるため注意が必要です。最高使用温度は約1,100℃、常時使用温度は約900℃まで耐えることができ、高温での合成反応にも利用することができます。その他、実験系を応用した化学工業プロセスや、薬品処理や洗浄工程でも利用することが可能です。

3.分析化学

石英ボートは、分析化学における各種の試験・分析において試料を保持する用途でも利用されています。特に、蒸発や乾燥プロセスなど、加熱を伴うプロセスにおいて石英ボートは正確な分析結果を得るのに有用です。高温などの試験条件によって溶融したり侵食されたりすることがないため、試験結果に影響を与えることなく、試料を安定して保持することができます。
具体的な事例としては、魚に含まれる水銀の微量分析における試料の燃焼分解、新規開発材料や既存材料の特性評価などが挙げられます。

4.太陽電池・LED製造分野

太陽電池製造では、シリコン基板の熱処理や拡散工程において、石英ボートがウエハーやセルの支持具として使用されます。
また、LEDや光電子デバイスの製造工程では、小型の石英ボートが基板の高温処理や化学反応プロセスに用いられ、精密な加工の安定性に寄与します。

5.研究機関・大学での使用

試料の加熱実験や酸化・還元処理など、繊細な化学反応において試料を保持する容器として利用されます。特に、分析化学の分野では燃焼分解や高温乾燥などにも適しています。